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Channel: スポーツナビ+ タグ:ヴェンゲル
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マンUの失敗に学べ! アーセナルが進めるべき「ポスト・ヴェンゲル」時代への準備

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何度目のことだろう。私が欧州サッカーに没頭し始めてから約12年が経とうとしている。そのうちの何シーズンで、アーセナルのアーセネ・ヴェンゲル監督の解任説が噂されただろうか。しかし、私がサッカーを見始めた2006年も、そして2017年の今日も、ガナーズの指揮官は変わらない。同チームは2016年12月18日にマンチェスター・シティ戦で1対2の逆転負けを喫すると、今月3日にはボーンマスに一時3点のリードを許す展開に。なんとか引き分けに持ち込んだが、試合後には英『デイリースター』がヴェンゲル監督の解任するファンの声を取り上げた。それでも私は断言できる。今シーズン中にヴェンゲル監督が解任されることはない。理由は単純。「いつものこと」であるからだ。 一方で、ヴェンゲル監督の契約が2017年6月30日で終了することも、契約延長に向けた交渉がまだ具体化していないことも事実だ。今シーズン限りで「退任」する可能性も報じられている(後任候補にはユヴェントスのアッレグリ監督や前インテル監督のマンチーニ氏が浮上)。正直、私もヴェンゲル監督がこのタイミングでアーセナルを去る可能性はあると感じている。しかし、この名門クラブは慎重に考えなくてはならない。ライバルが大きなミスを犯した経験から学ぶべきだと感じている。■限界を感じさせるヴェンゲルの未完のチーム私の知っているヴェンゲルのアーセナルは、常に輝かしい未来を感じさせる「未完」のチームだった。記憶に鮮明に残っているのは、2008年にアンフィールドで行われたリヴァプールとのチャンピオンズ・リーグ準々決勝セカンドレグ。ファブレガス、フラミニ、フレブらが絡む美しいパス回しからソングが先制点を奪う。1対2と劣勢の展開となるが、ジェラードがボレーを空振りすると、これを拾ったウォルコットがトップスピードのドリブルで4人抜きを見せ、最後はアデバヨールをアシスト。結果的に2対4で黒星に終わり準決勝への進出を逃したアーセナルだったが、「ヴェンゲルの教え子たち」が与えたインパクトは物凄かった。そして数年後を楽しみにさせるチームだった。 しかし、ファブレガス、フラミニ、フレブはその後アーセナルを去り、ディアビは度重なる怪我に悩まされた。ワンダーキッドのウォルコットは背番号14を背負うが、開花しないまま27歳になっている。その後もヴェンゲルのチームでは多くの有望な若手がプレーした。デニルソン、ヴェラ、ベントナー、トラオーレ・・・しかし彼らはそのポテンシャルを活かせぬままエミレーツ・スタジアムを去った。今でも在籍しているラムジーやウィルシャーも、期待させたような選手にはなっていない。 若手中心のチームを作っていたヴェンゲル監督だったが、近年は「大物」の獲得にも動いている。13/14シーズン前にはレアル・マドリーからエジルを約4700万ユーロで、その翌年にはバルセロナからサンチェスを約4300万ユーロでチームに加えた。さらに昨シーズン前はライバルのチェルシーからチェフを(移籍金は約1400万ユーロだが)、今シーズン前にはシャカとムスタフィを迎え入れた。ここ数年は若手育成に加え、「ビッグトランスファー」に動く姿勢を見せているのだ。 私がアーセナルというチームを知ってからの10年強の中でも、プレミアリーグは大きく変化した。「ビッグ4」の時代は終わり、マンCは金満クラブになった。トッテナムも力をつけてきた。リヴァプールは常連だったCLから姿を消した。絶対王者マンチェスター・ユナイテッドもここ数年は苦しんでいる。ヴェンゲルのライバル、モウリーニョはチェルシーを去った後、インテルで大きな成功、レアルで多少の成功を味わってから再びチェルシーに戻り王者に輝いた。そしてスタンフォードブリッジを去ると、今ではマンUの監督を務めている。 しかし、アーセナルは変わらない。今でもエミレーツ・スタジアムでは魅力的なチームが美しいサッカーを展開しながらも、トロフィーにはなかなか手が届かない。未完のチームは、今日も未完のままだ。もしかしたら、このフランス人指揮官のチームは永遠に未完のままなのかもしれない。そして素晴らしいフットボールを見せながらも、これ以上プレミアリーグやCLのトロフィーに近づくことはもうないのかもしれない。そう感じさせる部分もある。もしかしたら、もう限界なのかもしれない。そう思えば、「退任」という別れも非現実的とは言えない。■「ポスト・ファーガソン」に苦しむマンU アーセナルがヴェンゲル監督との別れを選択するのは残念だが理解不能なことではない。しかし、長年のライバルであるマンUを見て欲しい。サー・アレックス・ファーガソン元監督が去ってから苦しむこのチームから学ぶべきことは少なくないと思う。誰もが知っているように、ファーガソン氏は1986年から2013年まで、27年間もの間この名門で指揮官を務めた。そしてその名門を、イングランド一の超名門に押し上げた。リーグのトロフィーの数では宿敵リヴァプールを追い抜き(同監督のもと13度リーグを制覇)、CLでも2度の王者に輝いた。71歳でマンUを去ったが、ラストシーズンもやはりリーグトロフィーを掲げた。 そのチームが翌シーズンはモイーズ監督(途中解任)のもとで苦しみ、7位でシーズンを終える。名将ファン・ハールも任期中の2シーズンでクラブを立て直すことに失敗し、4位と5位でフィニッシュ。今期より指揮をとるモウリーニョ監督のチームも、直近の公式戦9連勝中とはいえここまでのリーグでのインパクトは期待ほど大きくはない。「ポスト・ファーガソン」の時代にここまで苦しむ理由は一つではないだろう。確かに、このレジェンド監督が持っていた戦術眼やマネジメント能力を失ったダメージは大きい。しかし、(モイーズ監督はともかくとして)ファン・ハール監督やモウリーニョ監督ですらインパクトを残せていないのは、同クラブが「ファーガソン監督がいない時代」に備えられていなかったからだと感じる。 27年間もの間圧倒的な成績を残せば当然の話だが、ファーガソン監督はクラブ内で巨大な権力を手にしていた。本物の全権監督だったのだろう。クラブの中ではオーナーよりも偉大な存在であり、当たり前ながら選手やファンからの尊敬も集めていた。普通のクラブでは考えられないような「柱」となり「軸」となっていた。「クラブより大きな存在はいない」という方針のもと数々の名プレーヤーを放出したファーガソン監督だったが、もしそのような存在がいたとすればこの名将本人だろう。 この点において、ヴェンゲル監督はファーガソン監督に似ている部分がある。同監督は、今季アーセナルでの21シーズン目を戦っている。この間にクラブのオーナーは当然変わっているし、持っている権力は相当のものだろう。ヴェンゲル監督が築き上げ、数々のワンダーキッドを獲得してきたスカウティングシステムはあまりにも有名だ。ファーガソン監督同様、アーセナルというクラブがヴェンゲル監督に依存しているのは事実だと思う。だからこそ、マンUのように「準備不足」の状態で「ポスト・ヴェンゲル」の時代を迎えてはならないのではないだろうか。 モイーズ監督の1年目のように、超名将の後に就任する監督に与えられる権力は限られる。ファーガソン監督やヴェンゲル監督のような仕事を1年目の監督(例えそれがファン・ハールのような監督であっても)に任せることはできない。なぜなら、優秀な監督はあくまで監督である。クラブ内のありとあらゆる権力を握った経験のある監督など、世の中にそれほど存在しないだろう。当然、アッレグリ監督やマンチーニ氏も例外ではない。 それでも、ファーガソン監督が去った時のように、ヴェンゲル監督がロンドンに別れを告げる日は必ず来る。ではその時に、今まで前任者が抱えていた責任・仕事をクラブ内でうまく回すことができるのか。次の監督のために、土台は用意されているのか。「全権監督」から、「普通の監督」が活躍するステージは整っているのか。改めてこれを考え、準備をする必要がある。今のアーセナルにそれはできているだろうか。答えは「ノー」だと思う。 だからいくら今のアーセナルが限界に見えても、いつまでも未完であるように感じても、ヴェンゲル監督との決別を急がないで欲しい。「サヨナラの意味」をしっかりと考え、ガナーズを支えた名将との別れを後悔しないで欲しい。

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